HOME > VOICES > 土と水の交わるところ・・・
土と水の交わるところ・・・

土と水の交わるところ・・・

「雁音米」は、無農薬や減農薬栽培はもちろん、ビオトープなど生き物の空間作りや田んぼの整備事業の見直しなど、総合的な田んぼの再生によって、様々な生き物たちとの共存を目指しています。私達日本人は、お米を食べるだけで環境を守ることもできるのです。

「雁音米」が生まれるまで

平成5年、未曾有の大冷害により、東北地方の農家が大打撃を受ける。
平成7年、冷害に負けない稲作りとして不耕起栽培を開始。
平成8年、雁の「日本雁を保護する会」の協力のもと、地域で初めておよび水田の冬期湛水(ふゆみずたんぼ)を行う。
平成10年、「いつまでも雁の声が聞こえる米作りを」という意味をこめて、「雁音米」を創出。
平成13年10月、農家相互の協力と普及、雁音米の販売のため、農家の有志で雁音農産開発有限会社を設立。
業種:雁音米およびその他農産物の栽培、加工、販売、栽培指導他
取組農家数:150名、(雁音米栽培面積:およそ471ha)

天然記念物と当たり前に共存!

雁音米の郷である宮城県北部は、日本で最大の雁の越冬地であり、越冬のため日本に渡ってくるガン類の9割以上が宮城県北部で生活しています。これは、自然度の高い沼と広大な田んぼが絶妙なバランスで調和しているからです。
他の地域から来た人達が地域に根付き、地域の農家と一緒に保全活動やグリーンツーリズム(都市農村交流)などを活発に行っています。田尻の人たちはよそ者に寛大で、それを受け入れ、自分達も変わることのできる器の大きさと柔軟さを持っていると思います。

冬になると、様々な田んぼで天然記念物のマガンをたくさん見かけることが出来ます。国を挙げて保護すべき野生生物が、当たり前のように隣り合わせで共存しているこのような光景は、他では見られません。

けれども問題点もあります。雁の呼び戻し運動が民間主体で始まったために、このような運動に行政が遠慮しがちで、明確な地域指導がなされていません。行政が積極的でなく、農業という産業が冷え込んでいるために、環境活動や個性的な農業で活躍している農家とそうでない農家との間に大きな温度差があります。
そのため、いくら先進的な農家が保全活動を行っても、一部で圃場整備事業などの水田の破壊が依然として行われています。

お米を食べるだけで環境を守る

雁音米は、雁との共生を願って生まれたお米です。田んぼでは、雁も含めたくさんの生き物が、私達の米作りを待っています。田んぼやあぜ、小川や水路、池や沼などを棲みかとする生き物達が、複雑な田んぼの生態系を作っているからです。

しかし、私達日本人全体が都会的で便利な生活を求めすぎた結果、田んぼは住宅地や工業地、そしてコメの生産工場として次々と開発されました。田んぼの喪失、農薬の使用、水路のコンクリート化などによって、生き物たちの命と生活場所が、どんどん奪わるようになったのです。

私達の田んぼでは、毎年冬になるとたくさんの雁が訪れ、落ち穂を食べて過ごしています。 私達の地域では、マガンが2千羽まで減ってしまい、絶滅が心配されていましたが、農法の工夫や沼の復元によって6万羽以上まで回復しました。私達が工夫し譲り合うことで、環境は再生できるのです。

雁音米は、無農薬や減農薬栽培はもちろん、ビオトープなど生き物の空間作りや田んぼの整備事業の見直しなど、総合的な田んぼの再生によって、様々な生き物たちとの共存を目指しています。私達日本人は、お米を食べるだけで環境を守ることもできるのです。ぜひ皆さんも、自分の、身の回りの田んぼや食卓に並ぶご飯に、たくさんの思いを馳せてみてください。その上で、私達のお米を選んでもらえたら・・・農家にとって、これ以上の喜びはありません。

トップに戻る∆

運営者写真

小野寺ひかる(水田企画 担当)

和歌山県生まれ。雁音農産開発(有)の代表、小野寺實彦の長男の嫁。水田企画として、主に田んぼの生き物調査や消費者交流を担当。
栽培カレンダーの作成や農家勉強会の実施、生き物調査活動、消費者への情報発信などを行っている。

地域

宮城県大崎市